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ちょいまって

使用したAI Stable Diffusion
つい、ちょいまってさんの名前を呼んでしまうくらい、ちょっと待ってほしい状況。

エレベータの扉が開くと、そこはエレベータだった。
何を言っているかわけがわからないが、事実を見たまま伝えると、そういうことなのだった。
対向のエレベータにも一人。疲れた顔をした少女が乗っていた。
私が怖くなって扉を閉めようとすると、少女は「ちょいまって!」と言った。
「どの階に行ってもエレベータなんやけど、どないしたらええやろか?」
私はどないにもならん、と吐き捨て、閉ボタンを連打した。
「ちょ、なんでやねん! こんな状況で人におうたら、まずは助け合いやろ!」
「いや、なんとなくおまえが原因な気がする! 俺はまだ1回目だ! 次の階に行けば普通に食料品売場に出れる気がする!」
「なら、いっしょいこか~、ちょうど食料品売り場に用あるんや~」
「こら、乗ってこようとするな! おまえがいたらループするんだろ!」
「後生やで! ホンマは怖くてチビリそうなんや! もう30分くらい、エレベータにしかつかんのや!」
「呪われてるだろ、おまえ! わかった、俺が無事脱出できたら、おまえの乗ってるエレベータの会社に連絡してやる! だからいまは俺一人で行かせろ!」
「見捨てる気やんか! 見捨てる気やんか! エレベータ会社に連絡ゆうて、そんなんで脱出できるんやったら……できるんやったら?」
こちらのエレベータに乗り込もうとぐいぐい来ていた彼女の圧が、急に和らぐ。
「おまえ、非常ボタン押してみた?」
「そんなんあったわ……いままで押したらあかんボタンおもて、存在消してたわ……あ、押して見るやさかい、閉めんといてや? ホンマ堪忍やで?」
「わかったわかった、押す間は見ててやる」
「ほんなら、押すで?」ポチ。
少女がボタンを押したあと、わずかな静寂が流れ、そして……
『こちら、ラビリンスエレベータです。何かございましたか?』
向こうのエレベータのマイクから、若い女性の声が流れてきた。
「あわわ、あんな、今日は友だちと会うんでな、先に美容院いっとこおもて、ちょっと早めに家を出たんや。そしたら階段の途中でな、黒猫がよぎってな、これ不吉やんおもてな……」
突然で慌てているのか、説明に入る時系列が前すぎる少女。
「はやく本題に入れ、切られるぞ」
「わやや、とにかくや、駅ビルのエレベータのったんやけど、どの階に行ってもエレベータなんや! あたし美容院に行きたいんや、たすけてや!」
『どの階に到着しても、外もエレベータということでお間違いありませんか?』
「せや」
マイクの女性は冷静な声で確認してくる。こんなとんでも申告でも、真面目に対応してくれるんだな。私は少しエレベータ会社を見直した。
『確認しました。時空間転移座標のデータが破損しているようですね。お客様が乗られたエレベータは、テキトーナ星団、カンサ星系の4番惑星イベンデの首都、スマンの中央駅ビルですね』
「そうや、はよたのむわ」
『破損データの修復を行います。少々お待ち下さい………………修復確認、これで次に移動されましたら、美容フロアに出られますよ』
「ほんまか、助かるわ~。時空転も故障とかあるんやなー」
少女は心底ホッとした表情をした。
『他にお手伝いすることはございますか? ございません? それではサポートを終了致します。快適なエレベータのご利用をお楽しみ下さい』
それを最後に、ぷつりとマイクからの音声は途絶えた。
「てなわけや。おっちゃんのおかげで無事脱出や! 感謝するで」
「ああ、見捨てようと思ったが見捨てないで良かったよ」
「やっぱ見捨てる気やったんな! でもまあ、感謝の気持ちはかわらんで。ほな」
彼女はにっこりと手を振りながら、自分のエレベータの閉ボタンを押した。
扉が完全に閉まるまで、彼女は笑顔のままだった。

その後はすんなりと、B1を押すとエレベータは食料品売り場に到着した。
「……あの子、宇宙人じゃんな」

呪文

入力なし

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