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そこはコミーの村だった

使用したAI Dalle
「探索には食料を仕入れないと、まあ久しぶりに村に顔を出しておくか」
書物の発掘・収集・修復を主に行う歴史学者兼博物学者のマーカスはそう呟きつつ同郷の者らが開いた新田村に1年ぶりの訪問をした。
しかし出迎えたのは鎌と槌の旗が翻る変わり果てた村の姿だった。

「鉄雄さん、これはどういうことですか!?」
「おお、マーカスじゃないか元気そうだな。古文書っていうの?いいもんでもあったか」
「今回は逆。これから発掘に、じゃなくてこれはなんなんですか!」
「ソビエト連邦だよ。見てわかんだろう」
「いやいや。なんで、今ソビエトなんですか!」
「お前が作ればいいって言ったんじゃないか。何言ってんだマーカス」

するとマーカスの脳裏に一年前の会話がよみがえる。

「鉄雄さん、最近の調子はどうですか?農作物の出来とか、最近の周りの様子とか、流行りものとか。」
「流行りもくそもあるか!コメも野菜もいい感じなのは良いが、山賊が来て面倒でたまらん。どうにかして欲しいわ」
「理論上は国ってやつなら……アメリカ合衆国、日本国、大韓民国とか」
「復活失敗してんじゃねーか全部。なんかほかに強そうなのはないか?」
「強そうなものって、そういう問題じゃ……そうですね。ソビエト連邦とか神聖ローマ帝国なんてどうです?加盟国がゼロになっただけと言いますし、滅亡してないんだから加盟してみればどうです?新ソビエト連邦憲法の写しもちょうどありますし、安くしておきますよ」
「おう、よこせ。どれどれ……」
「あ!コメ代と相殺ですからね」

そして1年前のバカな会話から意識が現在に戻る。
「ってわけでよ、お前の言う通りウラーって叫びながらな、周りの村と一緒に追い回したら山賊の奴ら逃げていきやがったってわけよ。それで今日はソビエト連邦再建1周年パーティってわけだ。ちなみに俺は中央委員会書記長ってやつをやってる」

マーカスは記録用紙に書き始める。「フラットランドを中心とするニューナゴヤの集落二十余り、ソビエト連邦に加盟すると称し相互に盟約し旧き名跡を蘇らせんとす。亡国より百年余り後の珍事なり。なお、新田村の鉄雄をもって中央委員会書記長とす」こう書きながらも、マーカスの心の中では、民俗学的インシデントだよ、これ、黄昏梟の今年の研究事故例で紹介されるよと悲鳴を上げるほかなかった。

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