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究極の選択 ***幕明け***

使用したAI ChatGPT
これは、未来の地球で起きた出来事である。

人類はついに、長年夢見てきた室温超電導の実現に成功した。まさに技術革命の幕開け。各国の研究者たちはさらなる低コスト化を目指して熾烈な競争を繰り広げている。

今、胸に湧き上がるのは、確かな誇りだった。長年夢見た偉業に、自らの手で関われたのだから。定年を迎える165歳目前での達成。研究者として、技術者として、ようやく報われた瞬間だった。

いつも休憩する屋上で空を見上げると、それはいつもより青く、透き通って見えた。まるで空さえも、私たちの到達を祝福しているかのように。

しばらくして、足音と共に部下がやってきた。

「所長。****テクノロジーの高橋社長がお見えです」

「私に?……うちの社長は?」

「社長がおっしゃっていました。『こんな偉業、自分には説明できない。張本人の所長を呼んでくれ』と」

「ああ、そうか」

普段なら臆さず前線に立つうちの社長が、今回は一歩引いた。それほどの出来事なのだろう。私は、いつもは飲まない缶コーヒーを一気に飲み干し、部下と共に応接室へと向かった。

室内に入ると、****テクノロジーの高橋社長が穏やかな笑みを浮かべて立っていた。

「偉人が来たな」

その言葉に私は反射的に答えた。

「いえ、これは優秀な部下たちの努力の結晶です」

「まあ、そう謙遜なさらずに」

高橋社長は微笑を浮かべ、椅子を指し示した。

「さあ、皆さんお揃いですし、腰を下ろしましょう」

席に着くと、隣に座った部下が私のために用意してくれた資料を差し出した。私は「ありがとう」と軽く微笑み、それを受け取り、高橋社長に向き直った。

「さて、本日はどのようなご用件で?」

高橋社長は静かに言葉を紡いだ。

「弊社も超電導の研究に取り組んでまいりましたが……今回のご功績を拝見し、心より感銘を受けました。ぜひ、御社に資金提供をさせていただきたい。用途は御社のご判断にお任せします」

その言葉に、うちの社長は目を見開き、息を呑んだ。

「本当ですか?! ありがとうございます……まさか、****テクノロジー様にご支援いただけるとは」

そして、これまでの歩みを噛み締めるように語った。

「お恥ずかしい話ですが、うちは黒字ではあるものの余裕がありません。売上は130億、純利益はわずか5〜8億ほど。研究費を確保するために、幾度となく苦渋の決断を下しました。いくつもの研究を断念し、幾度も暗礁に乗り上げそうになりながら、社員たちは歯を食いしばって頑張ってくれました。ようやく、報いることができます。本当にありがとうございます」

私はその言葉の裏にある重みを、痛いほど知っている。

この会社で最も苦しんできたのは、間違いなく経営陣だった。役員報酬は新人社員と変わらぬ水準、あるいはそれ以下。ある日、会議室の前で耳にした社員たちの会話が今でも忘れられない。

「社長たち、バイトしてるらしいですよ。……うちってそんなにヤバいんですか? 所長?」

私は静かに答えた。

「黒字ではある。ただ、余裕はない」

その一言で、社員たちは少しほっとしたようだった。私は続けた。

「それでも、役員は社員たちの給料を守るため、自らの報酬を削っている。表情はいつも穏やかでも、資金繰りに苦しんでいるのは事実なんだ。まさか、バイトまでしているとは思わなかったが……」

だからこそ、社長の「ありがとうございます」には、言葉では言い表せない安堵がにじんでいたのだ。

高橋社長は話を続けた。

「資金提供とは別に、お願いがあります。弊社の社員を、御社に出向させていただけないでしょうか。必要な技術も、惜しみなく提供いたします」

社長は迷うことなく頷いた。

「問題ありません。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

そして、次の瞬間。高橋社長はさらりと、とてつもない言葉を告げた。

「では、一回目の資金提供として2,000億円をお支払いします」

「い、1回目? 2,000億……?」

社長の声が裏返った。無理もない。2,000億という金額に加え、“1回目”という言葉がさらなる衝撃をもたらした。

沈黙を破るように、部下がぽつりとつぶやいた。

「……社長、もうバイトしなくて済みますね」

場が一瞬、和やかな笑いに包まれた。

高橋社長は微笑を浮かべたまま、さらに続けた。

「しっかりと、適正な役員報酬を受け取ってください。次の資金提供は半年後、5年間で10回を予定しています」

「10回……?! 2,000億ずつ……?」

「いえ、2,000億とは限りません。状況に応じて、必要であれば上乗せします」

なんという規模だ。流石超巨大企業。年間売上250兆、純利益率20%を誇る“化け物企業”とはいえ、それでも世界企業ランキングでようやく300位とは……。

「支援の詳細は、後日改めてご連絡いたします。それより――今回の主役である室温超電導について、詳しく伺いたい」

「承知しました。それでは、私からご説明いたします」

私は口を開いた。1時間、いや2時間にも及ぶ説明だっただろうか。時間の感覚は曖昧だったが、有意義で満ち足りたひとときだった。

すべてが報われたと思えた。社長の目は輝き、高橋社長も深く頷きながら、こう漏らした。

「ここまで詳細に研究されていたとは……弊社も学ばなければなりませんね」

最後に、小さく息を吐くように言った。

「……凄い」

正直、誇らしかった。世界の大企業から認められるほどの偉業を、この会社で成し遂げられたのだから。

話が一段落し、高橋社長たちが帰る段となった。玄関先で彼は、ふと足を止めて言った。

「とにかく、5年は耐えてください。この5年は、いくらでも支援します。今はお伝えできませんが、5年後に必ず真実をお話しします」

その目は冗談ではなかった。むしろ、何かに怯えるような影すら宿していた。

彼らを見送ったあと、私は社長と社長室で向かい合った。

「社長……当面は資金の心配はなさそうですが、あの“耐えてください”という言葉、気になります」

「……ああ、確かに引っかかる。ただ、今は危険なのだろう」

社長は、ゆっくりと窓の外を見つめながら言葉を続けた。

「室温超電導が現実のものとなれば、エネルギー産業は根本から変わる。恩恵を受ける人々がいる一方で、既得権を失う者もいる。企業は利益のために動く……彼らが、我々の存在を快く思わないのは自然なことだ」

その言葉には、未来を見据える静かな覚悟が込められていた。

「妨害されることが“危険”だというのなら……我々は、それに備えるしかない」

私は意を決して言葉を発した。

「社長、お願いがあります。私を役員にしていただけないでしょうか?」

社長は目を見開いた。

「私はこの研究所の所長ではありますが、立場上は一介の執行役員にすぎません。定年まで残り数ヶ月。それまでで構いません。どうかご検討いただけませんか」

私の中には、言葉にしがたい直感があった。社員たちが、この先何らかの危険に晒されるかもしれないという、本能的な不安。そして、役員としてであれば、最前線に立って彼らを守り続けられるかもしれないという願い。

社長はゆっくりと頷いた。

「……実はな、君に頼もうと思っていたんだ。役員だけでなく、部長や社員たちからも“ぜひ所長を”という声が上がっていてね。私からも、どうか正式にお願いしたい」

そして、社長は笑いながら冗談めかして言った。

「こんな偉人を定年退職させたら、どんな暴言吐かれるかわからん。強制的にでも役員にする。……手放すわけがなかろう」

その言葉に、私も思わず笑みをこぼした。だが、その内心は静かに引き締まっていた。

私は心の中でひとつの覚悟を決めていた。これから迫りくるであろう危機に、正面から立ち向かうために――。

──そして今。

定年を迎え、株式会社○○研究素材の研究員としての人生に一区切りをつけた私は、新たに役員としてこの会社に貢献できることに、これ以上ない喜びを感じていた。

会社の隣にある研究棟の玄関を通り抜け、3階の研究室へ向かう途中、1階から3階まで吹き抜けになっている広い空間が視界に入る。

そこには、くつろいだりタブレット端末やラップトップで作業をする研究員たちの姿があった。ふと見ると、ひときわ人だかりができている場所がある。3台並べられた大型テレビの前、そのうちの1台に注目が集まっていた。

私は気になり、軽く声をかけた。

「おはよう!」

数人がこちらを振り返り、その中の一人が明るく応じた。

「おはようございます! 桐島取締役」

──取締役。

かつて100年近く“所長”と呼ばれてきた身には、まだどこかくすぐったく、少しだけ違和感のある響きだった。それでも、続けて多くの社員たちが「おはようございます!」と声を揃える。

その人だかりの中心に、新たに就任した若き所長がいた。彼は神妙な顔で私に向かって言った。

「取締役、これ見てください。この人、取締役のお知り合いじゃありませんか?」

そう言って指さしたテレビ画面には、ある速報が映し出されていた。

──《火星に本社を構える医療素材研究企業『レッドライン・バイオセラミクス』の取締役兼研究所長、エリック・マクリーン氏が変死体で発見されました》

私は思わず画面を見つめた。

エリック・マクリーン。

かつて、共に次世代医療用超電導素材の応用研究を進めていた人物。私とは旧知の間柄であり、何度も研究成果を競い合い、語り合った仲でもあった。

彼とは幾度も未来の医療を語り合った。だからこそ、この知らせには言葉を失った。

だが、その死は──あまりにも唐突で、そして不可解だった。

私は静かに息を呑みながら、心の中で呟いた。

……こうして、耐え抜くべき5年間が、静かに幕を開けたのだった。

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