エクスプローラー・イン・ニューナゴヤ #7(FIN)
辛くも襲撃を退けた少女とシンカロンの二人は、車を走らせ続ける。
かといって、行く当てがないわけではなく、少女の持っていたノートに興味深い地点があったため、ひとまずはそこに向かう事となった。
――『楽園』。そう示された地点にはこのようなコメントも添えてあった。
『丸一日過ごせる素敵な場所。できればここに住みたい……お金の都合さえできれば』
最早貨幣経済など崩壊して久しく、ある意味では資金の問題はクリアしたも同然である。それならばと二人はこの地点をひとまずの目標としたのだった。
ニューカナヤマからさらに南西に少し移動した地点、そこに到着すると、そこは放棄された保養施設のようであった。
南国の植物が数多く植えられた敷地内にはレストラン等の跡地が目立っており、かつてはニューナゴヤの人々の憩いの場となっていたことが容易に想像できた。
幸いにして、併設されている温浴施設やプールめいた施設はニューカナヤマからのエネルギー供給のお陰で運用が可能であった。そのため、二人はこの場でしばしの余暇を楽しむ。
探索や戦闘、更には夏の日差しによる熱気を冷たい水を浴びることでクールダウンする少女。火照った体に冷水が心地よく、ついはしゃいでしまう程に彼女は余暇を満喫した。
シンカロンは、そんな少女の様子を見つつシンカロン用の椅子に腰掛け、エネルギーの充填を行う。その横顔には、仄かに達成感からくる笑みが滲んでいた。
遊び疲れた少女は、休憩室と思われる場所にて休息に入った。対するシンカロンには人間ほど休息の必要性が無いため、窓際に立ち遠くの景色を見つめていた……少女のお陰で危機は逃れたものの、これから先の未来はどうなるのだろう、という微かな不安を抱えながら。
見れば、西側の遠方……ノーマンズランドにて何かが燃えている様子や、ビーム光が瞬いているのが見えた。
何かしら、大きな変化が間近に迫っているかもしれない。そんな予感が彼女の思考回路に去来する。
だとしたら……自分は、そしてあの車も変わらずにはいられるのだろうか? 遥か昔に製造され、そのまま現在に取り残されてしまった機械たちに。
その答えは見えない……ただ、安らかな少女の寝顔を見ているとそのような不安も少しだけ和らぐ気がしていた。
かくして、少女とシンカロンの旅路はひとまずの区切りをつけた。この先、ニューナゴヤの、そして世界の未来がどうなるかは未だ分からない。また、少女の持つノートに書かれた『ニューナゴヤの財宝』も、まだ解き明かされてはいない……実在しているならば、の話ではあるが。
ただ、少しだけ予言をするならば……『真っ赤でピカピカな車が、ニューナゴヤの街を走っていた』という噂が人々の口から発せられることであろう。
少女とシンカロンの旅路は、もう少しだけ続くのだった……。
最初からもう一度: https://www.chichi-pui.com/posts/4a891695-8934-4dc9-8b68-88856c5b28de/
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