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https://www.chichi-pui.com/posts/ec9e79f0-2755-4b10-a1ea-f1316907a3bb/その夜。
俺「はあ〜、結局残業だよ。奥沢さん指示多すぎ」
残業を終え、俺は家路を急いでいた。
閑静な住宅街には人気が無く、俺の靴音だけが響く。
ようやく俺の住むアパートの近くまで辿り着いた時、アパートの門前に人影があることに気付いた。
近付いてみると、そこにいたのは制服姿の少女だった。
〈画像1枚目〉
建物の一点を見つめたまま、1人微動だにせず立っている。
その視線の先にあるのは、俺の部屋だった。
俺「キミ、こんな時間にどうしたの?あそこは俺の部屋だけど、何か用?」
たまらず声をかける。
〈画像2枚目〉
少女「長谷川奏多(はせがわ・そうた)さんですか?」
質問に質問で返されてしまった。ちなみに長谷川奏多というのは俺のフルネームだ。
俺「そうだけど」
〈画像3枚目〉
少女「私は井上亜未(いのうえ・あみ)と言います。ここに父が来ていませんか?」
俺「はい?」
予想外の質問の連続に、意図せず変な声を出してしまった。
こっちはただでさえ仕事終わりで疲れているのに、いきなり見知らぬ少女にそんなことを訊かれても、とっさに答えが出てくる訳がない。
亜未「すみません。実は私、家出中で、今帰る所が無いんです」
俺「は?」
亜未「それでさっきパ……父の家に⸺あっ、私両親が離婚してて母子家庭なんです⸺行ったんですけど、まるで別人のようになっていて」
俺「はあ」
亜未「私を見るなりいきなり襲いかかってきたんです。私がいくら叫んでも、理性を失っているのか全く聞き耳を持たなくて……。あれは父じゃない、ただの野獣です」
〈画像4枚目〉
俺「……それは災難だったね」
ここまで聴いて、俺は全てを察した。
亜未「で、父の金的に蹴りを一発入れたら大人しくなって。それで正気に戻ったのはいいんですけど、今度は『あなた、誰?』なんて言い出すんですよ?」
亜未の語気が強くなってきた。
亜未「で、『私はあなたのお父さんじゃない。お父さんはここにいる』って言ってこのメモをくれたんです。だから確かめようと思って」
俺「そのメモちょっと見してくれる?」
俺は亜未からメモを受け取った。街灯を頼りに見る。確かにここの住所だ。
そしてその筆跡に俺は見覚えがあった。
亜未「てっきりなんかの冗談かなって思ったんですけどどうやらマジみたいで……」
俺「わかった。案内するよ」
亜未「ありがとうございます!」
〈画像5枚目〉
亜未は歯を見せて笑った。
俺は亜未を自室に案内した。
「コーポトランセル」
そんな名前の少し古びた共同住宅。ここの2階の一室に、俺とオッサンは住んでいる。
俺「あれ?鍵がかかってる」
オッサンは出かけているようだ。例によってコンビニにでも行っているのだろう。
鍵を開け、中に入る。
俺「むさ苦しい部屋だけど」
亜未「いいえ、ありがとうございます」
靴を脱ぎ、居間に通す。
会った時は気付かなかったが、亜未は大きなスーツケースを転がして来ていた。
俺「はいどうぞ」
俺は亜未にペットボトルのお茶を渡した。
亜未「ありがとうございます」
〈画像6枚目〉
亜未は少し小柄で黒髪ショートの、まあどこにでもいそうな女子高校生という外見だが、どこか大人びた雰囲気を漂わせている。
その時、ドアの開く音がした。
オッサン「帰ったぞー!いつまで経っても帰ってこないから駅前の居酒屋で飲んできちまった⸺」
亜未「パパ!?」
〈画像7枚目〉
オッサン「あ、亜未?! なんでオマエがここに」
俺「待ってたんですよ。門の前でずっと」
亜未「やっぱりここにいたんだ」
涙声になる亜未。
俺「こんな大きな娘(こ)がいたんじゃないですか。どうして今まで黙ってたんです?」
オッサン「うるせえな。オマエには関係無いだろ?」
亜未「やめてパパ。長谷川さんになんてこと言うの」
オッサン「………」
俺(さすがのオッサンも、娘には弱いってか)
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