昔話風
https://www.chichi-pui.com/posts/fda2f730-475f-4c33-92e8-68e9fa62b0c6/現代風
https://www.chichi-pui.com/posts/8acf54bd-7b97-4590-838c-34de06ba5bf3/前編
https://www.chichi-pui.com/posts/ac56e972-e6cd-4e9c-8b77-68376b1bb4e3/後編
https://www.chichi-pui.com/posts/2877a238-ed8f-4c29-940b-376dacafa70e/ お節介な騎士(銀髪ちゃん)も少し書いておこう。男だと詰まらん。
女だ(身体だけの割り切った関係)
ついでに父親が乗り込んできたのも書いておくか。こいつは正直
に言えばどうでも良いや() という感じで出来上がりましたw
あ、超危険特殊植物編の後半部分の流れを少しだけ追加しました。
流石に翌日にさっさと別れた感じはダメすぎだろorz
「貴様のせいでうちの娘がぁぁぁぁぁっ!!」
剛剣一閃、振り下ろされた一撃を紙一重で躱す。当たっていたら
命がないなこれは。
「あんたの娘?」
「かつて、ここに植物学者の娘が来ただろう」
「ああ……あいつか」
「あいつとか言うな、この盗人がぁっ!!」
「まぁ、間違ってはないよねー。身も心もってやつかな」
「外野は黙ってろ」
「絶対に殺す!! うがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
二度三度と力任せに剣を振るってくる。怒りからか攻撃そのもの
は単調なので、躱すのは簡単なのだが、倒してしまって構わないの
だろうか。
「良いけど、やりすぎないようにねー」
とは、良くここに来ているお節介な騎士だ。この男の娘。つまり、
あいつの触手花の研究においての成果を教えに来るお節介な騎士だ。
「あの子、色んな男からモテモテで告白されてるけど、好きな人が
居ると全員を一刀両断する勢いで断ってるらしいよ。実力行使に
出る馬鹿もいるけど、そういうのは全員返り討ちにされてる」
「返り討ちって……強いのか?」
「相手が女と油断してるのもあるけど、あの子を、僕が少しばかり
鍛えてあげたからね。ボンボンな貴族じゃまず勝てないよ」
こいつに鍛えられたとなると……普通の奴はまず勝てないな。
「そうか」
「気にならないの?」
「……。学者として大成しようが、誰かと一緒になろうが、俺には
関係のない話だ」
元々の住む世界が違いすぎる。だから、あの時もどうこうは言わ
なかったし、今後、関りはないと思っている、いや、思っていた。
こいつがいちいち来て話を聞かせなければ……な。
「モテモテになった時期と、ここに来た時期が被ってるんだよね」
「俺には関係のない話だ」
「本当にぃ? 手を出してたんじゃないのぉ?」
「しつこいぞ」
こんな風なやり取りをしながら、過ごしてたある日のことだった。
「多分、ここに彼女の父親が怒り狂って来るから対処よろしく」
「はぁっ!?」
思わず驚いた声を出してしまった。こんな事を聞かされたのは、
実に数十分ほど前の事だった。いつものようにやってきては、勝手
にあいつの事を話した上でだ。
「いやぁ、あの子……ちょっと触手花の研究で成功しちゃってさ」
「そうか」
「で、その切っ掛けが、ここでの事とバレちゃったらしくてさ」
「……。何かあったら止めろ。お前の全力でだ」
「りょーかい。君なら大丈夫と思うけど。僕と張り合えるくらい
には強いし」
「この場所……という条件付きだがな」
ふざけた口調だが、こいつは王国最強の騎士だ。森の最奥は到達
できないが、香水を使わずにその手前までには単独で行けるくらい
の実力はある。
こちらは森を知り尽くしているから、それらを利用して対抗でき
たが、本気の訓練をしようかと付き合わされた時には、ぼこぼこに
された。あれは本当に思い出したくもない。
「元々は騎士団長だったけど、貴族暮らしで今じゃ実力はかなーり
落ちてるからね。尊敬できる人だったのにね……はぁ」
力任せに剣を振るって時には権力で脅して……と。嘆きたくなる
のも分かる。まぁ、あいつの今回の件についても口を出そうとして
いるらしい。これが毒親……少し違う気もするが。毒だな。
「貴様のせいで、貴様のせいで、貴様のせいでぇぇぇぇぇっ!!」
まるで呪詛だなと躱し続けながら思う。そろそろ鬱陶しいので、
倒すとしようか。想像以上に弱いしな。
「煩い、やかましい、娘の事を考えれば、黙って……いろ!!」
「うわぁ、容赦なーい。僕でもここまでやらないよ」
あまりにも煩いのでつい本気を出してボコボコにした。たまに、
見回りで森の中に入り、運良く取り込まれずに済んだ女を救出する
際に触手とやり合う事もあるが、あれに比べれば遥かに楽な相手だ。
「き、き、き、さ……ま……のぉ」
「寝ろ」
地面に倒れ込んだところを追撃の一撃を与えて気絶させる。さて、
どうしてくれようか。
「僕がきちんと回収して帰るよ。だから森に放り込まいようにね。
そんな事をしたら……こんな親でもあの子は悲しむから」
「一つだけ言ってやる。お前の事は信用はしている。だから、二度
とこんなくだらん用件で来ないように釘を刺しておいてくれ」
「りょーかい。いやぁ、信用されてるなんて嬉しいなぁ」
言いたくはないが、事実なのでたまにはと思い言っておく。これ
で念入りに釘を刺しておいてくれるだろうという思惑も込みだが。
「ああ、そうそう。そんな君にお知らせ。どうせここからは動く事
はほぼないだろうけど。恩赦というか罪が軽減されたから」
「恩赦……だと?」
「ちょっと国主変わったからね。権威を息子に譲っただけだけど」
「そうなのか。どうでも良い事だ」
「君が行った事に対する罪は消えないし、今後も償いの日々は続く
けど、あの子の想いにはきちんと答えてあげても良いと思うよ」
「……」
「たまーに、手紙来てるんでしょ?」
中身は季節の挨拶と近況報告だが、成果に関しては特に書かれて
いなかったし、こちらも当たり障りのない返事をしていた。
「お前には関係のない話だ」
「うん、関係はないね。でも、全く関係がないわけではないよね。
別に僕は問題ないけど、ばらされたくないよねぇ」
「ちっ……」
こいつとは条件付きで身体の関係を結んでいる。条件というか、
主に力試しと称しては森の奥まで突っ込んで、全身返り血を浴びて
帰還をしてきた時に限ってではある。
触手花の分体の血にも当然ながらその手の副作用はあるらしく、
ただでさえ戦闘後の興奮している状態のこいつは、部下に見せられ
ないくらいにはやばい事になる。
それでも、初めての時はしおらしかったんだがな。はぁ。
「まっ、相性は良いけど、あの子に悪いからね」
「ふんっ、いい加減良い男を探してくれ」
「そうなんだけど……どいつもこいつも弱くてね」
王国最強の名を欲しいままにする女騎士のお眼鏡にかなう男は
早々居ないらしい。剣を抜いた時のこいつはマジでやばいからな。
「彼女のお兄さんはこれと違って良い腕してるんだけどね。でも、
それだと君の義理の姉になっちゃうか」
「おぃ」
「あはは、まぁ、釘は徹底的に刺しておくから安心して」
「頼む」
後に……本当に義理の姉になるとはこの時は思ってなかった。
いや、本当に……変な巡り合わせもあったものだ。
おまけのおまけ
「あぁ、恩赦に関してだけど。これで君は不慮の事故で死亡という
形で始末をされちゃうという、最悪の未来は消えたよ」
「……」
「そういうのも予想の範疇だったんでしょ? 色々な意見はあった。
でも、この森を良く知る君を君を失って花を効率良く採取ができ
なくなるのは大きな損失だから、実行はされなかったけどね」
「……。少数の犠牲による多数の幸福か」
少数の犠牲はこの森に限定していえば、警告を聞かず突っ込んだ
連中だ。多数の幸福は、触手花のお陰で助かる命もあるという事だ。
「恩赦はありがたく受け取る。やる事は変わらないがな」
「うん。それは仕方ない。ただ、事前に届け出をすれば、別の人が
代わりに見張ってくれたり、欲しいものがあれば、申請して貰う。
多少の融通は利くようになったよ」
「そうか。それは助かる」
「そのあたりの窓口は僕がやるからよろしくね」
良いのかそれで……王国最強の騎士がそんな事やってて良いのか。
まぁ、本人が言ってるのだから良いのだろう。
それから少しして再会して告白して、しばらく経ってから正式に
夫婦になった。
あの父親に関してはあの一件以降は大人しくなったというか相当
に締められたらしく。結婚前に流石に挨拶しないのはまずいと会い
に行く事になったが、低姿勢で謝られたのは気味が悪かったとだけ
言っておく。
「ど、どうでしょうか」
「……」
「な、何か言ってくださいよ」
「い、いや……その……なんだ」
見惚れててまともに感想が言えないとか言えるわけないだろう。
「あー、大丈夫大丈夫。綺麗すぎて言葉出てないだけだから」
「っ!!」
「そ、そうなんですね。それなら嬉しいな」
ちくしょう、その笑顔は反則だろう。
「兄さんも義姉さんと早く結婚式を挙げれば良いのに」
「義姉さんなんて嬉しいなぁ。まぁ、彼がまだちょっと忙しいから
仕方ないんだけどね」
家督を正式に継いだが、そのせいでいまだに多忙な日々のようだ。
妹を不幸にしたら俺が地獄の果てまで追いかけてでも殺すと念入り
に釘を刺された。そうはならないように全力を尽くすと答えておい
たが、あの人ならやりそうだ。
多忙なせいで今回の出席は義姉になるこいつだけだが。居てくれ
るだけでもありがたい。
「大丈夫とは思うけど、馬鹿がやらかさないとは限らないからね」
と少し前にこっそり耳打ちしてきた。まぁ……居るんだろうな。
こいつを諦めてない輩は。
流石に帯剣はしてないが素手でも強いので問題はない。
「神の前で貴方達は夫婦になる事を誓いますか」
「「誓います」」
「よろしい。では、誓いのキスを」
こうして俺達は正式に夫婦になった。今後どんな風になっていく
のかは分からないが、罪と向き合いながらそれでもこいつを幸せに
しようと思う。
「違いますよ」
「んっ? 何が違うんだ」
「二人で全力で幸せになっていくんですよ」
「そうか……そうだな」
「はいっ」
これからどうなっていくかは分からないが、少なくとも俺の全て
をかけてこの笑顔を守りながら、生きれるところまで生きようと心
の中で固く誓うのだった。