深森に棲む呪医の庵
我々の年齢を全て合計して2倍にしても届かない年齢を自称するその女性はまるで10台後半の若い娘に見えるが、時折見せる凄みがその言葉に重みを与えている。その女性を以てしても解けない呪いに侵された都市を助けるため、彼女の師匠とやらの住む森に来たが、何度か通過した緑のアーチはくぐるたびに現実感が薄まっていくのを感じる。子供時代に言い聞かされた昔話を思い出していると、依頼人が再びため息をつき、私に、そういった話は子供向けにマイルドにされている、と告げる。人食いの老婆が?と肩をすくめると、食われるだけで済むなら随分とマシな末路です、と大真面目に返された。
仲間の狩人が何かを見つけたようだ。指さした先に不可思議な木に生えたような小屋が見え、そこで笑みを浮かべた童女が手を振っている。
なるほど。理解の範疇外だ。食われる方がマシな末路について詳しく聞くのはやめておこう。」
呪文
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