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ここはシラクレナ、シオン藩とスワガ藩の境に位置する地の、とある墓地である。
この墓地は普通とは異なっており、埋葬されるのは人間ではなく動物のみであった。
その墓場を管理するのは、一人の動物をこよなく愛する少女。名を霞(かすみ)と言った。
彼女は幼き頃から一匹の犬と暮らしていたのだが、その犬が不慮の事故により命を落とし、悲しみに暮れる中墓をたてたのが始まりであった。
それから彼女は、野良も飼われも分け隔てなく、全ての動物の魂が安らかに眠れるようにと、次々に動物の供養をしていき、気がつけば立派な墓地へとなっていた。

そんな彼女には、妖獣とはまたことなる妖、動物霊がはっきりと見えていた。
霞に愛され安らかな眠りの地を得た動物達は、感謝のあまり成仏せずに彼女の傍に残っているのである。

「ねえ、あなたたちにこんなことを頼むのは、とても心苦しいのだけれど……」

霞がおずおずと語り掛けると、墓地中から動物霊がなんだなんだと次々に集まり始める。

「今、この国は大きな争いごとに巻き込まれているでしょう? だから、その……少しでも早く終わってほしくて、あなたたちの力を借りたいの」

申し訳なさそうに彼女がそう口にすると、霊達は嫌がるどころかむしろ、役立てることを喜ぶように宙を舞った。

「も、もちろん、直接戦場に行ってほしいなんて、そんな恐ろしいことは頼まないわ。 ただ、今後戦うことになるかもしれない他の国の事を、調べてきてほしいの。 あなたたちなら、水場でも森でも、越えて行けるでしょう?」

その問いかけに、霊達は勿論と頷く。
それを見た霞は控えめに笑みを浮かべるが、またすぐに心配そうな顔になって念を押す。

「でも、危ないと思ったらすぐに帰って来てね。 ほとんどの人には見えないだろうけれど、どんな力を持った人達がいるかわからないから……」

ふわふわと漂う霊達は、おのおの大丈夫だというようにくるくる飛び回ると、早速散り散りになって飛んでいく。
その後ろ姿を見送りながら、霞は両手を合わせて無事を祈るのであった。

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