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「みんなーただいまー!」

セントレイクの南方、碧く広がる大草原の丘上から、小さな影がこちらに向かってくる。
先端の赤毛が特徴的な大きな耳に、青空に映える赤と白の巫女服。
愛くるしく手を振りながら駆けてくる彼女は、数週間前に同盟国フェンテスへ特使として遣わされていた獣人族の少女だった。

元気一杯に故郷へ戻ってきた彼女を、セントレイクの騎士団長エルランが温かい眼差しで迎え入れた。
「ああ、おかえりライラ!本当に久しぶりね。元気だった?」
「うん!ねぇ、それより聞いて!フェンテス、すごいんだよ!建物がみーんな高くて、ピカピカで……あ、空飛ぶワンちゃんもいたの!」
「はは、そうかそうか。赤耳神社の看板巫女が、特使の任務をしっかり果たしてきたようで何よりだ」
興奮冷めやらぬ様子のライラに、エルランは笑顔で応えた。

「みんなもただいま!」
ライラが、エルランの後ろに控える数十名の騎士たちに声をかける。
彼らもまた「ライラちゃんおかえり」「無事に帰ってきてくれてよかったよ!」「今日もお耳が可愛いぞー!」と、ライラの帰還を喜び、祝福する言葉を返した。

和やかな空気が流れる中、エルランが仕切り直すようにライラに尋ねる。
「ところで、ライラはここまで一人で帰ってきたのか?確か行きの際は、先方が浮遊馬車を用意してくれていたと思うが」
「ううん、一人じゃないよ!それと馬車でもなくてね……実は近くまで、あの子に乗ってきたの!」

そう言って振り返ったライラが「出てきて良いよー!」と声をかける。
間も無くして、ライラが駆けてきた丘の向こうから、大きな影がゆっくりと姿を現した。

獣人の大人20人分はあろうかという巨大な体躯。精巧な機械で繋がれた四肢に、厚い金属で覆われた体表。
唸るエンジン音と共に浮遊するそれは、多くの兵装を身に纏った戦闘用ロボットだった。

「なんだ……これは……一体!?」
突如眼前に現れた未知に対し、エルランたちが一斉に剣を構える。
「あー!待って!待って!みんな、この子は大丈夫!何もしないから!」
騎士団のその反応を予想していなかったのか、ライラが慌てた様子で彼らとロボットの間に入った。

「ライラ、こいつは一体なんなんだ?……この無機質で不可解な外見……まさかフェンテスの?」
張り詰めた表情のエルランからの問いに、ライラは元気に頷いた。
「そう!これはフェンテスが私たちのために造ってくれたすっごく強いロボットで、名前は『械(カイ)』って言うの!」
まるで自分の家族を自慢するかのように、ライラは話を続ける。
「械はね、フェンテスの技術と、私が教えたセントレイクの魔法を組み合わせて、マリちゃんっていう天才技術者が設計してくれたロボットなんだよ!マリちゃんはすごく頭が良くてね、私の神社の狛犬やセントレイクの神様の話をしたら、『じゃあ、それをモチーフにしようか』って、すぐにデザインを変えてくれたの!マリちゃんデザインのこの子のお耳、とっても可愛いでしょ!」

なんとも嬉しそうに、場の空気などお構いなしに話すライラの様子に、エルランたちの剣を握る力が少しづつ抜けていく。
「そうか。つまりこいつは味方で、私たちに危害は加えないんだな?」
「もちろん!械は私とマリちゃんの言うことをちゃんと聞く、とってもいい子なんだから!みんなのこと傷つけたりなんかしないよ!」
ライラのその言葉から間も無く、エルランが短く息を吐いた。
「……分かった。私はライラを信じよう」
そう言うとエルランは剣を鞘に納め、次いで騎士たちの警戒を解かせた。
また、ライラに尋ねる。
「近くに行っても問題ないか?」
ライラが「大丈夫!」と応えると、エルランはゆっくりと彼女の方に近づいていった。
械の目の前、5メートル付近まで近づくと、エルランはゆっくりとその機体を見上げた。

「これは……本当にすごいな。荒々しくはあるが、確かにこの意匠には、赤耳神社の狛犬、それから私たちの信仰する知恵の神を想起させるものがある」
「さっすがエルラン騎士団長!お目が高い!それにね、械には特別な力があるんだよ!」
「特別な力?」
ライラは一層胸を張りながら続けた。
「ふふーん、実はね……」

その時、セントレイク南城壁付近から大きく警報が鳴り響いた。
「え!?何?何?」
困惑するライラに対し、エルランが冷静に応える。
「どうやら、私たちがここで控えていた理由が来たらしい」

エルランは急ぎ騎士たちに隊列を組み直すよう指示すると、真剣な顔でライラに向き直った。
「時間がない。帰ってきたばかりのところ悪いが、お前とこの械の力を私たちに貸して欲しい。頼めるか」
戸惑いに満ちていたライラの表情が、一瞬で力強いものに変わる。

「もちろん!そのために私はフェンテスへ行ったんだもん!」
そう言うと、ライラは背後の械に勢いよく振り返った。そして、ゆくっりと手を伸ばす。
「械、あなたの力を私たちに見せて!」
ライラの言葉に呼応するかのように、械は大地を揺るがすほど大きな雄叫びを上げた。

これは、後にセントレイクの新たな神話となる、獣巫女と機械の大狼の、その始まりの物語である。


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※DALL E3 => Nijijoureny(イメージプロンプト) => SD => Photoshop(加筆修正 + 色彩調整)というフローで作成しています。

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