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雨音に包まれて (1)

使用したAI NovelAI
「こんにちわ」

降りしきる雨の中。駅前の公園に設置された東家(あずまや)で黄昏れていたところ、突然声をかけられた。
白いブラウスに、紺色の釣りスカート。淡い栗色の髪を肩より少し短めにカットして、小ぶりな丸眼鏡をかけている……そんな少女だ。

梅雨に入ってからというものの、連日のように降るゲリラ豪雨に、俺はほとほと嫌気がさしていた。
新しく始めたバイト先の店長は典型的なパワハラ気質で、今日はもうバックれてやろうかと考えていたところだったので、思わず面食らってしまう。

「お兄さんも雨宿りですか? 急に降ってきましたもんね」
「あー、うん。まあ、そんなとこ」

適当に会話を合わせると、少女ははにかむようにして微笑む。
歳は十一、二ぐらいか。恐らく、近所の学校に通っている子なのだろう。少しアンニュイな雰囲気がするのは、こんな天気のせいだろうか。
雨でびしょ濡れになっていたので、見かねてタオルを貸すと、妙に懐かれてしまった。少女は彩羽と名乗り、しばらくの間、他愛のない会話をしていたけど、雨は一向に止む気配がない。

「そろそろ、帰ったほうがいいんじゃないかな。折り畳み傘があるから、持っていきなよ」
「有川さんは、どうするんですか?」
「言ったろ、バイトをサボったって。明日はどうせ二限からだし、もう少し時間を潰してから行くよ」
「それなら、わたしも……」
「彩羽ちゃんはまだ小学生だろ。親だって心配するだろうし、早く帰ったほうがいい」

彩羽ちゃんはここに残ると言ったけど、もうじき日も暮れる。強めの口調で帰るように促すと、彩羽ちゃんは躊躇いがちにこう答えた。

「……わかりました。でも、せめてまた後日お礼をさせてください。お借りした傘も、ちゃんと返しますから」
「いいよ、そこまでしなくて」
「それじゃ、わたしの気が収まりません。……それに、父や母からも、他人の親切を無碍にしてはいけないと教わりました」
「彩羽ちゃんは、いいご両親を持ったんだね」
「……とにかくわたし、ここで待ってますから。有川さんも、ちゃんと来てくださいね?」
「ちょ、ちょっと待てって……!」

呼びかける声には足を止めず、彩羽ちゃんはそのまま公園の出口へ駆けていく。

「……バカバカしい。何を期待してるんだ、俺は」

感傷を振り払うように呟いた独りごとが、ホワイトノイズの中に溶けて消えた。
――雨は、まだ降りやまない。

呪文

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