きれいな星空だから。
ちょうど赤信号になり、車を止めた。
可愛らしい声がした方を向くと、俺がやったドレスを着た美水の向こうに、星空が広がっていた。
「すごいな」
「心がこもってなーい」
「もうそんなはしゃぐ歳じゃねぇんだよ」
そう言って、くくっと笑い、腕時計を見た。ディナーの時間まで、まだ時間がありそうだ。
「少し寄り道するか」
青信号に変わるのと同時にウインカーを出して左折した。
「すごいすごーい!」
高台がある公園にやってきた。
美水は高台まで走ると空を見上げてはしゃいでいる。
俺はポケットから煙草とライターを取り出した。箱から一本取り出すと火を点け咥え、ゆっくり美水の後を追った。
ヤクザの俺に目をつけられ、愛されたお前は、これから危ない目に遭うだろう。
敵対している組に狙われる事だってあるかもしれない。
だが、俺が、命を懸けて守る。
だから、俺の傍でずっと笑ってくれねぇか。
……柄じゃねぇな。星空にやられ、ロマンチックになっているかもしれねぇ。
美水に追いつくと、
「お義父さん、いつも素敵なドレスありがとう。でも、私こんな素敵なドレスが似合う女性かなぁ……」
と、自信なさげに笑った。
「何言ってる。お前は俺が会った女の中で一番美人だぞ」
「そ、そうかなー。そうだといいな」
そうに決まっている。
十年以上前から、心を持っていかれ、お前に恋焦がれ、それ相応の歳まで手を出さずに待っていた男が言うんだから、間違いねぇ。
そんなことを考えていると、
「お義父さん、何を考えていたの?」
美水が駆け寄って見上げてきた。
「ディナーの後が楽しみだなと思ってな」
「ディナーの後?」
「ホテルの部屋を取ってある」
「えっ……」
美水の顔が茹で蛸みたいに真っ赤になった。
「そのドレスを脱がすのが楽しみだ」
「お義父さんが言うと、なんかオヤジくさい……」
「もうそんな歳だからな。あと、二人きりの時は名前で呼べっつったろ」
「え、う、はい。……冬彦さん」
「よくできた」
美水を抱き締め額にキスを落とした。
美水はさらに真っ赤になり、額を両手で押さえた。
そんな美水を見ながら、また思った。
なぁ、美水。
お前を命を賭けて守るっつったのは嘘じゃねぇ。
何が何でも守ってやる。
竜堂組若頭としてではなく、
お前を愛する一人の男として。
☆:*・゚☆:*・゚
星空カーデート、冬彦(ふゆひこ)視点でしたー。
ショートショート楽シーサー!・:*+.\(( °ω° ))/.:+
呪文
入力なし