戦死者の棺 (桜の子)
あの季節を操る異能を持つ唯一の少女「桜の子」が1キロの範囲だけ春にしていた。
戦死者の棺は粛々と運ばれ墓地で合同葬儀の式典が開催された。
参加者は腰をほぼ半分まで下げる最敬礼を行った。この最敬礼を受けることができるのは戦死者の棺とヒノイ国皇族のみである。
棺の数は約80。その半数が10代だと聞いた。異能は思春期に最大の力を発揮するため、10代でも最前線に配置されたのだ。
戦死者に彼女が知る者はいないが、彼女の友人は転移異能があり戦地に行ったまま連絡がない。
「今日はお疲れだったね」大尉の階級章を付けた若い男が彼女に声をかけた。思わず敬礼する。
「楽にしたまえ。しかし、見事な桜だ。範囲が狭いとはいえこの異能は凄いな。遺族の方も感動されておられた。何と言っても桜はヒノイの国花だからな」大尉は空を仰いだ。
「いいえ、私の異能は季節を替えるだけのものです」彼女の声は小さかった。軍式典に参加するために急遽、軍曹の階級章をつける羽目になってしまった。
軍式典正式参加には最低でも下士官級でないとダメらしい。
「悪いが、来週も同様の式典がある。また頼むよ」
「はい」
大尉は手を振って葬儀の車列に戻っていった。
若い娘と思って近寄った兵士が胸の階級章を見て慌てて敬礼する。笑って答礼した。
桜が舞っている。美しい風景だ。しかしこれは彼女の異能の作りだした虚偽の春なのだ。
「早く本当の春が来ないかな」彼女は呟いた。
呪文
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