四月馬鹿ラプソディ「カクヨム版」

カクヨムで掲載している１話完結のエピソード
一万五千年後の4月馬鹿ラプソディがランキング700位内に入りました⁽⁠⁽⁠ଘ⁠(⁠ ⁠ˊ⁠ᵕ⁠ˋ⁠ ⁠)⁠ଓ⁠⁾⁠⁾
本編よりランク上なのはありがたいです(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)
せっかくなので、ちちぷいにも掲載しちゃいますorz


一万五千年後の4月馬鹿ラプソディ
御酒ド助平

　ここは西暦二千五百年からさらに壱萬五千年後の地球。
　舞台は魔王が統治している現在の福岡県、博多。
　壱萬五千年後は福岡県ではなく、福岡国として統治されている。

　そこで執事として仕えているイケメンな少年、ラーヴィ・グラスドゥヴィ・バラン・シークが居ました。
　彼は、福岡国の魔王女様である、夢崎月美。
　そして月美の妹の椿咲。
　その幼馴染の桜照湖葵。
　さらには、彼自身の幼馴染のミント・シルヴィオ。
　これで終わらず、大宰府の美人巫女である望月幻刃。
　の五名は個性豊かな絶世の美少女達だ。そして、彼女達からラーヴィは求愛を受けており、尚且つ、無自覚朴念仁に五又しているプレイボーイである。もちろん、叡智な体のお付き合いもしている、けしからんハーレムボーイだ。
　そんなボーイ故に、ちょっとした事件が４月１日・・・魔王城のラウンジで発生してしまうことになる・・・

　４月の初日。春風がさわやかに通り過ぎる魔王城の廊下。シンプルな装飾に清掃が行き届いた、魔王城なのにとても清潔感溢れている。
　その魔王城で執事として勤めているラーヴは、主の月美に呼ばれてラウンジに向かっていた。４月入りなので、何か今後の相談だろうか？　と思い、ラウンジに入る。
ラーヴィ「御呼びでしょうか？　月美」
　主なのだが、男女の関係でもあるので名前呼びである。もちろん、当人の月美はむしろそう呼んで欲しいとお願いしている。
月美「あ、こっちきて～♪　ラーヴィ」
　声のする方に向かう。すると、豪華なソファーに腰かけている、見慣れた主が笑顔でラーヴィを迎える。
　美しい長い黒髪。宝石のように赤い瞳。前髪は分けてあり美しいおでこが見える。高校を卒業したばかりで４月から大学に通う、まだ十八歳のティーンエージャーだ。
　衣服は赤いゆったりとしたニットに黒いスカートを履いている。どちらも高級な生地を使ってあり、シンプルながらエレガントな雰囲気を表している。
　そこまではいつも仕える主な為不思議に思わなかったのだが・・・
　月美のお腹が、今までより明らかにふっくらと膨らんでいた。

ラーヴィ「ずいぶんとお腹が膨れていないか？」
　率直に問うラーヴィ。月美はニコリと歯を見せながら笑う。
月美「えっへへ♪　なんだと思うぅ？　にひひ♡」
　悪戯っぽく逆に問われる。思い当たる節は無いので首をかしげるラーヴィ。
月美「これはねぇ？　ア・タ・シとアナタ♡　の愛の結晶が宿ったんばい♪」
　愛おしそうにお腹を摩りながら答えを伝える月美。男女としての営みはしっかりとしていたので、どうやら懐妊したと伝えている・・・が
ラーヴィ「それ、ただお腹を膨らませてるだけだろう？」
　さらりと躱される。認知するつもりがないのだろうか？　この男は。
　しかし、月美はそのことを追求はしなかった。
月美「あら？　即バレ？」
　と、あっさり嘘をついたことを認める。あきれ顔でラーヴィは応える。
ラーヴィ「もし、僕と月美の間に子が宿ったのなら、そのお腹に新しいマナが感じられるだろう。しかし、それは無いうえに、急すぎる。あの行為でそこまでお腹が膨らむのなら３カ月前には懐妊していなければな？」
　昨日までスリムな月美のお腹が、急に懐妊してここまで膨らまないだろうと認識していた。さらに、未来の世界は魔王が存在するくらいなので、魔法、魔科学が発達している。それの媒体として魔力、マナ、霊力、エーテル、といった超常現象の力もある。
　新しい命が宿ったのなら、月美のお腹に子供のマナがあるだろうが、それが無い。その為、嘘を見破ったことになった。
月美「ん～♪　４月馬鹿っちことでシクヨロ♪　でも狼狽えんかぁ～、残念」
ラーヴィ「何がしたかったんだ？」
月美「アタシとラーヴィの子供が生まれるっち聞いたらどんな反応だろ？　っち思ってね☆　でもバレバレじゃしょんなかね♪」
　ある程度見据えていたのでガッカリはなかった。まったく、とあきれるもこうしたやり取りはまんざらじゃないラーヴィ。

ラーヴィ「それにしてもよく膨らんでいるな？　そのお腹」
　膨らみ具合から、本当に妊娠しているように見える。おおよそ４カ月くらいだろうか。ニヤッと笑って、月美はラーヴィの手を取り自分のお腹に触れさせる。
月美「ふっふふ♪　感じてみてよ？」
　すると月美はお腹を内側から動かして、あたかもお腹の赤ちゃんが動いているような振動を、ラーヴィの手に感じさせる。それに関心するラーヴィ。
ラーヴィ「すごく器用な真似をするな？」
月美「えっへへ♪　どよ？　腹踊りもできそうやろ♪」
　どや顔する月美。あきれるというより、仕方ないな？　と、微笑むラーヴィ。男女の信頼もだが、人同士としての信頼も深く繋がっているようだ。
ラーヴィ「なんだよ？　それ・・・腹踊りって・・・！？」
　ふと強烈な視線を感じてラーヴィは横を向く。するとそこに５人の影があった。

　先ほど紹介した桜照湖葵、夢崎椿咲、ミント・シルヴィオ、望月幻刃。
　そして、月美と椿咲の父であり、福岡国の魔王、アウディ・ヴィデバラン・夢崎がラーヴィと月美のやり取りを唖然とした表情で見ていた。

　前髪を綺麗に分けた、長く美しい青い髪にアクアマリンのような瞳の少女は桜照湖葵。
　大粒の涙と喜ばなければいけないが喜べない・・・むしろ絶望が見える表情を浮かべていた。
葵「に・・・兄にとお姉ちゃん？　・・・あ・・・お・・・・おめで・・・と？　あ？・・・あれ？　あれれ？　な・・・何も思い浮かばないや・・・ああ・・・あれ？　あれれ？　あ・・・へへへ」
　１つ年上のラーヴィを、兄にと呼び慕っていた葵も、彼とは肉体の契りを交わしており、愛している一人だ。
　姉のように愛している月美に子供が宿った事は喜ばしいことなのだが、その相手は愛しているラーヴィとの間となると、脳が破壊されつくされている。
　もちろん、月美、椿咲、ミント、幻刃が彼を愛しており、皆で共有するという認識はしていたが・・・覚悟もしていたのだが・・・子を宿すという急すぎる展開に覚悟が霧散してしまったようだ。
ラーヴィ「葵？　大丈夫か！　これは月美のじょうだ」
　冗談だと言いたかったのだが、すぐに叫び声が割り込む。月美の妹の椿咲だ。

　ウェーブがかかった長い黒髪は気持ちのやりようがないのか震えている。
　美しい赤い瞳なのだろうが、うれしい気持ちと怒りと悲しみが交じり合い纏まらない思考で完全に見開き切っており、涙混じりにギョロっと姉とラーヴィを睨みつける。
椿咲「お！？　おおおおお！？　お！？　お？　お姉様？　・・・お姉様ぁ！？　おおおおめ・・・おめ？　え　？・・・と、とう？　とうとう？　と・・・とおおおおおおおとう？　えええええ！」
　言葉にならない。葵と同様に脳が破壊されつくされて言葉にできない。感情も抑えれない。カオスに支配されている。
月美「椿咲！　ちゃううううう！　これはちゃうの！　あの、今日はね？　今日は」
　弁明しようとする月美だが、次の叫びがそれを閉ざす。

　綺麗な美しい緑の長い髪をポニーテールに纏めた、メイド服の少女はミント。
　ミントはラーヴィの幼馴染であり、小さい頃から幾多の死線を乗り越えた相棒でもある。生まれた時から生死を分かつ仲で他の四人よりも彼への愛は底知れない。
　主でもあるが、親友、戦友として最も信頼できていたのだが・・・
ミント「み！？　認めたく・・・ないわけじゃ・・・あれ？　シェア・・・するって決めてたし納得も・・・してたの・・・に？　あれ？　なにこれ？　なにこの気持ちは！　あああ！」
　絶望の表情で目を見開く・・・本来美しい黄色いトパーズの瞳は、絶望に包まれ濁り涙があふれている・・・椿咲と同様にカオスに支配されている。
ラーヴィ「ミントまで！　お、落ち着け・・・これは・・・ど、どう収集つけ！！」
　刹那・・・全身を弓矢で貫かれる感触を、ラーヴィと月美は感じる・・・回避は不可・・・絶命しか想像できない圧倒的な殺気を放つのは・・・

　美しい長い黒髪・・・前髪は綺麗に眉毛が見えるように横に切りそろえた、巫女衣装を纏う美少女の望月幻刃。全盲の為普段は眼を閉じているのだが・・・濁り怪しく光る紫色の瞳は完全に正気を失っているようだ・・・
幻刃「神威を百一回射貫いた・・・神威を百二回射貫いた・・・神威を百三回射貫いた・・・神威を百四回射貫いた・・・神威を百五回射貫いた・・・あれ？ま動いている？　なぜ？　まだ？　射貫きたりないのでしょうか？　何千本でも射貫かなきゃ？　彼みたいに・・・」
　彼・・・とは、以前彼女は恋人を理由あって弓矢で殺害している・・・
　何千本も射貫かれる・・・それが圧倒的な殺気となって、ラーヴィと月美の二人を襲う・・・幻刃は５人の中では最後に愛を告白した身ではあるのだが・・・誰よりも重い愛情があったようだ・・・シェアを認めても、内心は認めていなかったようだ・・・
ラーヴィ「幻刃！　落ち着け！　僕たちを射貫いても仕方がな・・・」
月美「４人共・・・ほんとちょっちまったぁ！　あのねこれはさぁ！？」
　弁明をしたいが次々とそれを止める威圧・・・最後は国王であり、月美の父親であるアウディだ・・・

　逞しく高身長の肉体。長い黒髪に鋭い赤い切れ目・・・カリスマの塊のような表情はシニカルに歪んでいる・・・
アウディ「・・・ははは、とうとうこの日が訪れるとはな？　だがね？　早いよ？　早すぎるよ？　おい？　なぁ？　あはは・・・あはははは！」
　王様は正気を欠いていた・・・五百歳を超えているが、実は子供は月美と椿咲の二人だけだ。お嫁にはいずれ行くとわかっていたのだが・・・授かりが先でしかも相手は雇っている執事。彼のことは信頼しているのだが、信頼が厚かった故に、順序を違えた行為に怒りで王としての威厳は消失している・・・誰よりもカオスに包まれている。
月美「パパぁ！　これはぁ！　ちがうのぉぉぉぉ！　話を聞いて、皆！」
アウディ「あははははは！　月美つーちゃん！かばうことない！　ラーヴィ！　ちょっと話があるから今から魔界に行かないか？」

　絶対ヤバイ話し合いになる・・・ゾッとするラーヴィと月美・・・

葵「にぃにぃ・・・兄いぃぃぃぃ！」
椿咲「お姉様ぁ！　ラーヴィ様ぁぁぁ！」
ミント「ラァァァァァヴィィィぃィィ！　月美ぃぃ！　Is fuath liom é! Is fuath liom tú!（恨めしい！恨みが酷い！）」
幻刃「あ・・・一万本到達？　でもまだ動いてる・・・あと一万本追加で射貫かなきゃ・・・」
アウディ「どこがいいかな？　魔界のどこが？あはははははははは！　はぁぁっは！」

　収集が付かずとうとう大泣きする月美。膨らませたお腹を引っ込ませ皆に見せつけながら泣き叫ぶ。

月美「皆ぁぁ！　ごめんてぇっぇ！　今日は４月１日なのぉぉぉ！　赤ちゃん授かってないとぉぉぉぉ！」

　月美の正気度も尽きてしまい、大泣きで崩れ落ちる。

ラーヴィ(・・・この場は・・・地獄だ！)

　そんな４月１日・・・四月馬鹿な福岡国、魔王城の光景だった・・・

おしまい☆ここまで読んで頂きありがとうございますorz