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久しぶり。
どうよ最近?
仕事は慣れた?

「まぁ、ぼちぼち、かな。」

休日。
明日の準備も終わり特に急ぎの用も無かったので、気晴らしもかねて家の近所をぶらぶらと歩いていた。
目的は無かったのだけれど、なんとなく駅の方に向かい、
あまり人気の無い公園に入ると偶然にも旧友に出会したのだ。
高校卒業以来だから…4…5年とちょっとぶりか。
久方ぶりだというのに、この素っ気無い物言いが如何にも彼女らしい。
あんまり変わってないな。
あの頃のまんまな感じだ。
こちらとしても久しぶりの割にフランクな物言いになったのは、
この子が相当の努力の末保育士になった事を人伝てに聞いていた事もあり、
その辺りに触れない様に声を掛けてみようと考えた結果である。

…だってこの子…努力してる姿を見られるのを妙に嫌がってたんだもん。
『がんばったね』とか言われると超イヤな顔するのよ?
面倒くさいでしょ?
まぁ思っていたよりもドライな受け答えになってしまった感は否めないが…言っちゃったものは仕方ない。
確かに彼女は子供好きだったし、前々からなりたいとは言ってたのは知っている。
言ってみれば夢を叶えたという事だ。
が…保育士ねぇ、ホントにちゃんとやれてんのかしら。
…などと余計な事を考えながら斜め向かいのベンチに腰を下ろした。

「あんたは?先生になったって聞いたけど。」

誰からとは問わない。地元に住んでいれば親兄弟姉妹、同級生に先輩後輩、いろんなところから噂は流れて来るだろう。田舎の情報網は侮れないのだ。

うん。今二年目よ。

「へぇ…まぁ向いてるとは思うけど…
 なんつーか、
 生徒指導とかして煙たがられてそうだな。」

失礼な。
先生先生って、ちゃんと慕われてますぅ。
モテモテなんですぅ。
ふ〜んだ。
腰に手を当て、胸を張って答える。
私の応えのどこが面白かったのかわからないが、彼女はククッと笑った。
悪戯っ子の様な笑みは以前のままだ。

「どうだか。…ところで何処の学校なんだ?
 この辺なんだろ?」

ああ、それなら。
母校の教師にね。なったのよ。

「…は?!ウチのかよ?!高等部?中等部?
 初等部じゃねぇよな?」

高等部よ。
前に言わなかったっけ?

「前って、おまえ…何年前の話だよ?!
 卒業した後会ってなかっただろうが!」

あら。
私は貴女が『保育士になりたい』って言ってたの、ちゃぁんと覚えているけれど?

「む…流石は伝説の生徒会長様だな。
 記憶力の良さは健在か。」

…あのねぇ、ウチの生徒会執行部には生徒会長って役職は無いんだって何度言えば…
って、まぁ、現役生でも知らない子は結構いるくらいだ…仕方ないか。
いやいや、そんな事より。
貴女、言葉遣いは直したの?
前は一人称が『俺』だったじゃない?
まさか子供の前で荒い言葉を使ったりは…

「流石にねーよ。
 子供と話す時の一人称は『せんせい』だしな。
 まぁ子供相手の時だけだけどさ。」

ああ、そう。
それならよ…良くないよ!?
職員室じゃ素のままって事じゃない!
子供って結構聞いてるものよ!?

「いやいや、職場じゃ『自分』つってんだよ、
 問題ないだろ?」

彼女は”やれやれ”といった感じで肩を竦めてみせる。
”やれやれ”はこっちのセリフだと言いたいところだが…まぁ良かろう。
『私』とか『あたし』じゃなくって『自分』ってのが…
彼女らしいっちゃ、らしいのかもしれないないが…
若干釈然としないモノを感じつつも、これ以上ツッこむのはやめておく事にした。

「…にしてもさぁ…」

言葉を区切り、ジッと私を見つめ、上から下まで視線を移動させる。
ちょいちょい…あんまりちゃんとした格好していないんだからファッションチェックはやめてくれるかな?

「…変わってねぇなぁ…。」

ん?そりゃ成人してるんだもの。
そうそう変化なんかしないわよ。たぶん。

「いや、そうじゃなくてさ…なんつーか
 中身がそのまんまってゆーか…
 わりぃ、上手く言えん。」

ふぅん…?
まぁ、言わんとしてる事はなんとなくわかる。
お互い年月を経て中身はそれなりに変わっているはず。
なのにも関わらず、こうして話すと“あの頃のまま”、
学生時代に帰った様に軽口を叩き合えるのだ。
それが『懐かしい』のではなく、『今も』そうだと感じられた事、
まだ友と繋がっているという感覚が、嬉しいのだ。
ちょっと言葉にするのは照れ臭いので言わないけれど。

「…さぁて、んじゃそろそろ行くわ。」

なんか用事でも?

「明日お遊戯会でさ、前準備ってやつ。
 今は昼休憩なんだわ。」

あ…それは邪魔しちゃったかしら。

「んにゃ。全然。」

そう…?なら良かった。
彼女が寄り掛かっていた壁から背を離しながら『よっこらせ』などと呟く。
こういう掛け声の様な言葉は動きに集中する効果があるというが、
『疲れている事を意識しない為に身体が発する言葉』でもあると聞いた事がある。
本当かどうかは定かではないが。
もしそうなら、かなりお疲れの様だ。

ねえ。

「ん?」

近いうちに飲みに行きましょう?

私がそう言うと彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
何故に驚く?
別段変な事は言っていないはずだが?

「いや…あんた、酒、飲むのかよ?」

…どういう意味かな?

「お酒は二十歳を超えてから!
 とかって言いそうだと思ってさ。」

おい。
貴女、私をいくつだと思ってるのかな?
同い年だよ?同い年。同級生。
アンダースタン?

「や、すまん。
 なんか昔のまんまだったんで、つい、な。」

人の事は言えない。ポケットに手を突っ込んだまま、
下を向いて可笑しそうにくっくっ、と笑う彼女も昔のままだ。
一瞬、高等部の制服を着た姿がダブって見えた。

「わかった。まぁ暇な時に誘ってくれ。
 あぁ、土曜の夜とかが良いな。」

了解。
じゃあそうする。

ヒラヒラと手を振って去っていく彼女の背中を見送りながら約束を反芻する。
他愛もない会話の中の瑣末な約束。だがこれも縁だ。
こんな風に旧交を温めるのも良いだろう。
そうだ、他の子も誘ってみようか。
あの子と仲の良かった子も最近会っていないと言っていたし…
ふむ、どうせなら…いっその事同窓会にでもしちゃおうか?
とすると、誰かに手伝ってもらうのが手っ取り早いな。
それなら生徒会執行部の仲間か?いや、学級委員やってたあの子に声をかけて…

あ、ちょっと燃えてきた。

なんて事を考えながら私も帰路についた。



ちなみに

連絡先を聞きそびれていたのを思い出したのは
家に着いてからだった。

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