背伸びした夜、初めての世界
ゆっくりと深呼吸を促すと、ほんの少し体が沈んだ。まつ毛が揺れて、目を閉じる。けれどどこか落ち着かない。
――ああ、かわいいな、と思った。
一生懸命“大人の顔”をしているけれど、ふとした拍子に年相応のあどけなさが顔を出す。
あの頃の自分も、もしかしたらこんなふうだったかもしれない。
「力、抜いて大丈夫ですよ。怖くないですからね」
声をかけると、少女が少しだけ頷いた。
どうかこの夜が、彼女の中に小さな思い出として残りますように――
呪文
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